マイクロ法人の設立を検討中の方で「赤字でも住民税がかかる」と聞き、不安に思っていませんか?
この記事では、法人住民税の仕組み、特に利益に関係なく課税される「均等割」について分かりやすく解説します。
結論として、マイクロ法人はたとえ赤字であっても、法人住民税として最低でも年額7万円の支払い義務が発生します。
その具体的な内訳や計算方法、個人事業主との違い、納税時期や方法まで網羅的に解説し、あなたの税金に関する疑問を解消します。
結論 マイクロ法人は赤字でも住民税が最低7万円かかる
マイクロ法人の設立を検討している方や、設立して間もない方が最も気になる税金の一つが「法人住民税」です。
特に、「事業が赤字だったら税金はかからないのでは?」と考える方も多いかもしれません。
しかし、結論からお伝えすると、マイクロ法人はたとえ事業利益がゼロや赤字であっても、法人住民税を最低でも年間7万円支払う義務があります。
これは、法人住民税が利益に応じて課税される「法人税割」だけでなく、法人の存在自体に課される「均等割」という仕組みを持っているためです。
個人事業主の場合、所得がなければ住民税は発生しませんが、法人であるマイクロ法人はこの「均等割」の存在により、事業の状況に関わらず一定額の納税が必要となる点を必ず理解しておく必要があります。
法人住民税「均等割」とは?赤字でも発生する税金の正体
法人住民税の「均等割(きんとうわり)」とは、法人が事業所を置いている地方自治体(都道府県や市区町村)から提供される行政サービス(道路の整備、警察・消防、ゴミ処理など)の対価として、その地域に存在するすべての法人が公平に負担する税金です。
いわば、法人の「年会費」や「場所代」のような性格を持つ税金と考えると分かりやすいでしょう。
この均等割は、会社の利益(所得)の金額とは一切関係なく、資本金の額や従業員数に応じて税額が定められています。
そのため、設立したばかりで売上がない状態や、経費がかさんで赤字決算となった年度であっても、法人として存続している限り支払い義務が生じるのです。
最低7万円の具体的な内訳【都道府県民税+市町村民税】
マイクロ法人が支払う法人住民税の均等割(最低額)は、「都道府県民税」と「市町村民税」の2つを合計した金額です。
ほとんどのマイクロ法人が該当する「資本金1,000万円以下かつ従業員数50人以下」の場合、その内訳は以下の通りです。
税金の種類 | 均等割の最低税額(年額) | 根拠 |
---|---|---|
都道府県民税 | 20,000円 | 地方税法第52条 |
市町村民税 | 50,000円 | 地方税法第312条 |
合計 | 70,000円 | – |
このように、都道府県に2万円、市区町村に5万円、合わせて年間7万円がマイクロ法人の住民税の基本となります。
この金額は、事業年度の途中で設立した場合でも、月割り計算はされず、原則として満額を支払う必要があります(一部自治体では月割り計算される場合もあります)。
法人を維持していくための固定コストとして、毎年必ず発生する費用だと認識しておきましょう。
そもそもマイクロ法人の法人住民税とは

マイクロ法人を設立すると、個人事業主とは異なる税金の支払い義務が生じます。
その代表的なものが「法人住民税」です。
法人住民税とは、法人が事業所を置いている都道府県および市区町村に対して納める地方税のことを指します。
これは、法人がその地域社会の一員として、道路や消防、警察といった行政サービスを受けていることに対する負担金(会費)のような性格を持つ税金です。
個人が支払う住民税が前年の所得に応じて課税されるのと同様に、法人の住民税も法人の所得(利益)に応じて課税される部分があります。
しかし、個人と大きく異なるのは、たとえ事業が赤字であったとしても、法人が存在するだけで最低限の支払い義務が発生する点です。
この仕組みを正しく理解することが、マイクロ法人の資金繰りを考える上で非常に重要になります。
法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2種類
法人住民税は、実は一つの税金ではなく、「法人税割(ほうじんぜいわり)」と「均等割(きんとうわり)」という2つの異なる要素を合算して計算されます。
この2つの性質を理解することが、法人住民税の全体像を掴むための鍵となります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
種類 | 課税の基準(何に対してかかるか) | 特徴 |
---|---|---|
法人税割 | 国税である「法人税」の額 | 法人の利益(所得)に応じて変動する。赤字で法人税が0円の場合は、法人税割も0円になる。 |
均等割 | 資本金の額や従業員数 | 法人の利益(所得)に関係なく定額で課税される。赤字でも支払い義務がある。 |
つまり、マイクロ法人が納める法人住民税の総額は、「法人税割の金額 + 均等割の金額」という計算式で求められます。
次の項目で、それぞれの内容をもう少し詳しく見ていきましょう。
赤字でも支払い義務がある「均等割」
「均等割」は、法人住民税の大きな特徴であり、特にマイクロ法人を設立したばかりの方が注意すべき点です。
前述の通り、均等割は法人の所得(利益)が赤字か黒字かに関わらず、法人がその地域に存在するだけで課税される税金です。
これは、法人が地域社会から受ける行政サービスの対価として、その規模(資本金や従業員数)に応じて公平に負担を求めるという考え方に基づいています。
いわば、その地域で事業を行うための「場所代」や「会費」のようなものとイメージすると分かりやすいでしょう。
そのため、たとえ売上が全くなく事業活動が赤字に終わったとしても、法人として登記されている限り、この均等割の納税義務は免れません。
この記事の冒頭で「マイクロ法人は赤字でも住民税が最低7万円かかる」と結論付けたのは、この均等割が存在するためです。
利益に応じて変動する「法人税割」
一方、「法人税割」は、法人の利益(所得)に応じて課税される部分です。
具体的には、国に納める「法人税」の税額を基準(これを「課税標準」と呼びます)にして計算されます。
計算式は「法人税額 × 住民税率」となり、この住民税率は事業所がある都道府県や市区町村によって定められています。
ここでの重要なポイントは、法人税割は、課税対象となる法人税額がなければ発生しないという点です。
事業年度の決算が赤字だった場合、法人税額は基本的に0円となります。
したがって、法人税額が0円であれば、それに連動する法人税割も自動的に0円になるのです。
マイクロ法人の場合、社会保険料の最適化などを目的として、役員報酬を調整し、法人の利益を意図的にゼロに近づけるケースが多く見られます。
このような運営を行った場合、法人税割の負担は発生せず、支払う法人住民税は前述の「均等割」のみとなります。
マイクロ法人の住民税「均等割」の具体的な納税額

法人住民税の「均等割」は、会社の利益に関係なく課される税金です。たとえ事業が赤字であっても、法人として存在する限り支払い義務が生じます。
ここでは、マイクロ法人が支払うべき均等割の具体的な金額がどのように決まるのか、その仕組みと納税額の目安を詳しく解説します。
均等割の金額が決まる仕組み 資本金と従業員数
法人住民税の均等割の額は、法人の利益や売上ではなく、その規模に応じて決まります。
この規模を判断する基準となるのが「資本金等の額」と「その自治体内にある事業所の従業員数」の2つです。
資本金等の額が大きく、従業員数が多ければ多いほど、納税額は高くなる段階的な仕組みになっています。
多くのマイクロ法人は、設立時の資本金を1,000万円以下にし、役員1名のみ、あるいは少人数の従業員で運営されることが一般的です。
そのため、ほとんどのマイクロ法人は税額が最も低い区分に該当します。
地方税法で定められている標準的な税率区分は以下の通りです。
資本金等の額 | 市区町村内の従業員数 | 都道府県民税(年額) | 市町村民税(年額) | 合計(年額) |
---|---|---|---|---|
1,000万円以下 | 50人以下 | 20,000円 | 50,000円 | 70,000円 |
50人超 | 20,000円 | 120,000円 | 140,000円 | |
1,000万円超 1億円以下 | 50人以下 | 50,000円 | 130,000円 | 180,000円 |
50人超 | 50,000円 | 150,000円 | 200,000円 |
※上記は標準税率であり、自治体によって異なる場合があります。
マイクロ法人の住民税は年額7万円が基本
上記の表からもわかる通り、資本金1,000万円以下、従業員数50人以下のマイクロ法人が支払う法人住民税の均等割は、原則として年間合計7万円となります。
この7万円は、「都道府県民税」と「市町村民税」という2つの税金で構成されています。
それぞれの内訳を見ていきましょう。
都道府県民税の均等割 2万円
都道府県に対して納めるのが「都道府県民税」です。
資本金1,000万円以下の法人の場合、均等割の標準税率は年額2万円と地方税法で定められています。
法人の本店所在地がある都道府県へ納税します。
市町村民税の均等割 5万円
市区町村に対して納めるのが「市町村民税」です。
資本金1,000万円以下かつ従業員数50人以下の法人の場合、均等割の標準税率は年額5万円と定められています。
こちらも、法人の本店所在地がある市区町村へ納税します。
この2つを合計した「2万円 + 5万円 = 7万円」が、マイクロ法人が赤字でも最低限支払わなければならない住民税の基本額となります。
自治体による納税額の違い 東京23区の場合
法人住民税の均等割は、地方税法で定められた「標準税率」を基本としますが、自治体が独自の条例によって税率を変更している場合があるため注意が必要です。
財政状況などに応じて、標準税率よりも高い「超過税率」を採用している自治体も存在します。
特に注意が必要なのが、東京23区に本店を置く場合です。東京23区は「市」ではなく「特別区」という扱いのため、市町村民税は課税されません。
その代わり、都道府県民税である「都民税」に市町村民税相当分が含まれる形で課税されます。
結果として、東京23区内に本店を置くマイクロ法人(資本金1,000万円以下・従業員50人以下)の均等割は、以下のようになります。
- 法人都民税の均等割:7万円
- (内訳:道府県民税相当分 2万円 + 市町村民税相当分 5万円)
このように、納税先は東京都のみになりますが、支払う合計額は他の市町村の場合と同じく7万円です。
自社の均等割の正確な金額を知りたい場合は、必ず本店所在地を管轄する都道府県税事務所および市区町村役場のウェブサイトを確認するか、直接問い合わせるようにしましょう。
マイクロ法人の住民税はいつどこに支払うのか

法人住民税の申告と納税は、設立した法人が自ら行う必要があります。
個人事業主の住民税のように自治体から通知が来て支払う、という流れとは異なるため、手続きを正確に理解しておくことが重要です。
ここでは、マイクロ法人の住民税を「いつ」「どこに」「どのように」支払うのか、具体的な手順を詳しく解説します。
納税のタイミングと申告期限
法人住民税の申告と納税の期限は、原則として各事業年度が終了した日の翌日から2ヶ月以内と定められています。
これは法人税の申告期限と同じです。
例えば、多くの法人が採用している3月31日決算の場合、事業年度は4月1日から翌年3月31日までとなります。
この場合の申告・納税期限は、3月31日の翌日である4月1日から2ヶ月後の5月31日となります。
また、前事業年度の法人税額が20万円を超える場合には、事業年度開始から6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内に「中間申告」が必要になります。
しかし、マイクロ法人の場合、利益を役員報酬で調整することが多く、法人税額が20万円を超えるケースは稀なため、基本的には年に1回の「確定申告」のみと考えてよいでしょう。
なお、定款の定めなどにより決算が確定しないといった理由がある場合、税務署に「申告期限の延長の特例の申請書」を提出することで、申告期限を1ヶ月延長できます。
ただし、注意が必要なのは、延長されるのはあくまで「申告」の期限であり、「納税」の期限は延長されないという点です。
納税が1日でも遅れると延滞税が発生するため、延長申請をした場合でも、納税は本来の期限である事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に行う必要があります。
納税先 都道府県と市区町村の両方
法人住民税は「都道府県民税」と「市町村民税」の2つで構成されているため、納税先も原則として2ヶ所に分かれます。
- 都道府県民税:法人の本店所在地がある都道府県の「都税事務所」や「県税事務所」
- 市町村民税:法人の本店所在地がある市区町村の「役所(税務課など)」
つまり、それぞれの自治体に対して、個別に申告書を提出し、税金を納付する必要があります。
例えば、神奈川県横浜市に本店があるマイクロ法人の場合、神奈川県税事務所と横浜市役所の両方に手続きが必要です。
ただし、これには重要な例外があります。東京23区内に本店を置く法人の場合、市町村民税に相当する分もまとめて東京都に支払います。
この場合、「法人都民税」として都税事務所に一括で申告・納税することになり、区役所への手続きは不要です。
手続きが一本化されるため、手間が軽減されるというメリットがあります。
具体的な納税方法
法人住民税を納付するには、まず「法人住民税の申告書(第六号様式など)」を作成し、各納税先に提出します。
その上で、算出された税額を納付します。具体的な納税方法には、いくつかの選択肢があります。
主な納税方法は以下の通りです。
納税方法 | 概要とメリット | デメリット・注意点 |
---|---|---|
納付書による現金払い | 自治体から送られてくる納付書、または自身で作成した納付書を使い、金融機関や自治体の窓口、コンビニエンスストアで現金で支払う最も一般的な方法です。領収書がその場で発行されます。 | 窓口の営業時間に支払う必要があります。コンビニ納付は取扱金額に上限(通常30万円まで)が設けられています。 |
電子納税(eLTAX) | 地方税のポータルサイト「eLTAX(エルタックス)」を利用して、インターネットバンキングやダイレクト納付(口座引落)で電子的に納税する方法です。自宅やオフィスから24時間いつでも手続きが可能で、非常に便利です。 | 利用開始時にPCの設定や利用者IDの取得などの初期手続きが必要です。ダイレクト納付は事前の口座登録が求められます。 |
クレジットカード納付 | 自治体が指定するウェブサイトを通じて、クレジットカードで納税する方法です。ポイントが貯まるメリットがありますが、決済手数料が納税者負担となることがほとんどです。 | 手数料がかかるため、実際の負担額は税額より高くなります。領収書は発行されません。 |
口座振替 | 事前に金融機関で手続きをしておくことで、納期限に指定の口座から自動で引き落とされる方法です。納付忘れを防げる点が大きなメリットです。 | 事前の申込手続きが必要です。残高不足にならないよう注意が必要です。 |
マイクロ法人の経営者で、本業が忙しい方や手続きを効率化したい方には、一度設定すれば手間が省ける電子納税(eLTAX)や口座振替が特におすすめです。
ご自身の状況に合わせて最適な納税方法を選択しましょう。
個人事業主の住民税とマイクロ法人の住民税の違いを比較

マイクロ法人を設立すべきか検討する際、多くの人が気になるのが「個人事業主と比べて税金はどう変わるのか?」という点でしょう。
特に住民税は、個人と法人でその仕組みが大きく異なります。
ここでは、個人事業主の住民税とマイクロ法人の法人住民税を比較し、その違いと節税効果について詳しく解説します。
計算方法が根本的に異なる
個人事業主とマイクロ法人では、住民税の計算の元となる考え方や税目の構成が全く異なります。
まずは、それぞれの計算方法の違いを理解しましょう。
個人事業主の住民税は、前年の「所得」に対して課税されます。
一方、マイクロ法人の住民税は、法人の「法人税額」や「規模(資本金・従業員数)」に基づいて計算されます。
最も大きな違いは、赤字(所得がゼロ以下)になった場合の取り扱いです。
個人事業主は所得がなければ住民税(所得割)はかかりませんが、法人は赤字でも最低限の住民税(均等割)を納める義務があります。
両者の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 個人事業主の住民税 | マイクロ法人の法人住民税 |
---|---|---|
課税対象 | 個人の所得(事業所得など) | 法人税額、資本金、従業員数など |
税の構成 | 所得割:所得に応じて課税(標準税率10%)均等割:定額で課税(約5,000円) | 法人税割:法人税額に応じて課税均等割:法人の規模に応じて課税(最低7万円) |
赤字の場合 | 所得がゼロ以下なら所得割は発生しない。 (均等割も免除される自治体が多い) | 法人税割は発生しないが、均等割(最低7万円)は納税義務がある。 |
申告・納税先 | 市区町村 | 都道府県と市区町村の両方 |
マイクロ法人化で住民税は節税できるのか
「法人は赤字でも最低7万円の住民税がかかるなら、個人事業主の方が得なのでは?」と感じるかもしれません。
確かに、住民税という税金単体で見れば、特に所得が少ないうちは個人事業主の方が負担は軽くなります。
しかし、マイクロ法人化の節税効果は、住民税だけでなく、所得税や社会保険料まで含めたトータルコストで判断する必要があります。
マイクロ法人化による節税の鍵は「役員報酬」にあります。個人事業主の場合、事業で得た利益のほぼすべてが「事業所得」となり、所得税・住民税の課税対象になります。
一方、マイクロ法人では、自分自身に「役員報酬(給与)」を支払うことができます。
この役員報酬は「給与所得」となり、経費として認められる「給与所得控除」が適用されるため、課税対象となる所得を大幅に圧縮できるのです。
例えば、課税所得800万円の個人事業主がいるとします。
この場合、800万円に対して所得税・住民税が課されます。
もし、この方がマイクロ法人を設立し、自身への役員報酬を400万円に設定した場合、個人の課税所得は給与所得控除を差し引くことでさらに低くなります。
その結果、個人の所得税・住民税は劇的に減少します。
法人の利益として残った400万円には法人税や法人住民税がかかりますが、それらを支払っても、個人で納める税金と社会保険料の減少額が、法人の税負担の増加額を上回ることが多いのです。
結論として、マイクロ法人化によって住民税が節税できるかどうかは、以下の式で判断できます。
【個人の所得税・住民税・社会保険料の削減額】 > 【法人税・法人住民税(均等割含む)の負担増】
この不等式が成り立つ場合、トータルで見て節税になります。
一般的に、事業の課税所得が400万円〜500万円を超えるあたりから、マイクロ法人化による節税メリットが大きくなると言われています。
ただし、これはあくまで目安であり、最適な役員報酬の設定や個々の状況によって結果は異なるため、専門家への相談や綿密なシミュレーションを行うことをお勧めします。
マイクロ法人の住民税に関するよくある質問

マイクロ法人の住民税に関して、特に疑問に思われがちな点をQ&A形式で解説します。
設立後や事業停止後など、様々な状況で発生する疑問を解消していきましょう。
休眠中の法人の住民税はどうなりますか
法人を設立したものの、事業活動を一時的に停止している「休眠会社」の状態でも、法人格は存続しています。
そのため、原則として法人住民税の均等割の納税義務は継続します。
しかし、多くの自治体では、所定の手続きを行うことで均等割が免除または減免される制度を設けています。
具体的には、事業を休止している旨を記載した「異動届出書」を、管轄の都道府県税事務所と市区町村役場の両方に提出する必要があります。
ただし、この免除措置は法律で定められたものではなく、あくまで各自治体の裁量によるものです。
届出を提出すれば必ず免除されるとは限りません。
また、一度でも事業活動(売上の発生、仕入れ、経費の支払いなど)を再開した場合は、休眠状態とは認められず、納税義務が復活します。休眠を検討している場合は、必ず本店所在地を管轄する自治体の窓口に確認するようにしてください。
申告を忘れるとどうなりますか
法人住民税の申告・納税を期限内に行わなかった場合、様々なペナルティが課される可能性があります。
たとえ赤字で納税額が均等割のみであったとしても、申告義務がなくなるわけではありません。
申告を忘れた場合に課される主なペナルティは以下の通りです。
ペナルティの種類 | 内容 |
---|---|
延滞税 | 法定納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。税率は年によって変動します。 |
無申告加算税 | 期限内に申告しなかったことに対する罰金です。原則として、納付すべき税額に対して一定の割合が加算されます。ただし、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合など、一定の要件を満たせば課されないこともあります。 |
青色申告の承認取消し | 2事業年度連続で期限内に申告書を提出しなかった場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例といった大きな節税メリットが受けられなくなり、法人税の負担が大幅に増えるリスクがあります。 |
うっかり忘れていた、という事態を避けるためにも、申告期限(原則として事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内)は厳重に管理しましょう。
均等割を節税する方法はありますか
結論から申し上げると、法人住民税の均等割そのものを直接的に減額する、といった節税方法は基本的に存在しません。
均等割は、法人がその地域に存在することで受ける行政サービス(道路の整備、警察・消防活動など)に対する会費のようなものであり、利益の有無にかかわらず負担すべき最低限のコストと位置づけられているためです。
しかし、税額を最低限に抑えるためのポイントは存在します。
資本金の額を1,000万円以下に設定する
均等割の税額は「資本金の額」と「従業員数」の2つの基準で決まります。
マイクロ法人の場合、従業員数が50人を超えることは稀なため、主に資本金の額が税額区分の決め手となります。
資本金の額が1,000万円を超えると、均等割の税額が跳ね上がります。
例えば、東京都23区内では、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合は年額7万円ですが、資本金が1,000万円を超えると年額18万円になります。
マイクロ法人を設立する際は、特別な理由がない限り資本金を1,000万円以下に設定することが、均等割を最低額に抑えるための絶対条件です。
事業を行わない場合は解散・清算を検討する
将来的に事業を再開する見込みが全くないのであれば、休眠ではなく法人の「解散・清算」手続きを行うことで、以降の均等割の納税義務を完全になくすことができます。
ただし、解散・清算には登記費用や税理士への報酬など、一定のコストと手間がかかるため、将来の事業計画と照らし合わせて慎重に判断する必要があります。
まとめ
マイクロ法人は、事業が赤字であっても法人住民税の「均等割」として最低でも年額7万円の納税義務があります。
これは、利益に応じて課税される「法人税割」とは異なり、法人が存在すること自体に対して課される税金だからです。
内訳は基本的に都道府県民税が2万円、市町村民税が5万円ですが、資本金や従業員数、自治体によって金額は異なります。
個人事業主の住民税とは仕組みが全く違うため、法人化の際はこの固定コストを必ず理解しておきましょう。