マイクロ法人とは何かを解説
マイクロ法人の定義と特徴
マイクロ法人とは、一般的に役員や従業員がごく少数(多くは1~2名)で、代表者自らが経営・運営を行う小規模な株式会社や合同会社を指します。
個人事業主と比較して法人設立のメリットは多いものの、規模を極限まで小さくして運営コストや運用リスクを最小限に抑えながら、その制度上の強みを活かす点に特徴があります。
主な特徴としては、資本金が小さく済む、従業員を雇わないまたは最小限に止める、代表者が自ら業務を遂行するなどが挙げられます。
また、家族を役員にすることも多いのが実態です。
区分 | マイクロ法人 | 一般的な法人 |
---|---|---|
設立人数 | 1~2名(代表者・家族が中心) | 複数名 |
雇用規模 | 最小または役員のみ | 複数の従業員 |
目的 | 節税・社会保険最適化等 | 事業拡大・役割分担等 |
このように、マイクロ法人は「個人事業主以上、通常の法人未満」という中間的な存在として、節税や社会保険料の最適化、経費計上範囲の拡大などを目的に設立されるケースが増えています。
近年は、フリーランスや副業会社員の方が安全かつ合理的に活動したいときにも活用されることが多くなっています。
設立数の現状と増加理由
近年、日本国内ではマイクロ法人の設立数が増加傾向にあります。
国税庁や法務省の統計によれば、特に2019年以降、株式会社・合同会社の新規設立件数全体の中でも、1人または家族のみが関与するケースの割合が上昇しています。
その理由としては、以下のような要因が挙げられます。
- 政府による起業・副業推進政策が進み、小規模ビジネスへの法人化のハードルが下がったこと
- 個人事業主としての節税限界や社会保険負担の重さから、法人化による最適化ニーズが高まっていること
- インターネットを活用したフリーランスや副業の広がりにより、名義分散や経営リスクヘッジの必要が増加していること
- 経費計上の自由度向上、役員報酬調整による所得分散、退職金制度導入などのメリットに注目が集まっていること
こうした背景から、「個人事業以外の選択肢」としてマイクロ法人の存在感が増しています。
特に節税対策や社会保険料の最適化を重視する個人にとって、有力な選択肢となりつつあります。
個人事業主とマイクロ法人の節税方法の違い

個人事業主の主な節税手法
個人事業主は、所得税や住民税の節税を中心に、様々な方法を活用しています。
主な節税手段としては、「青色申告特別控除」や「必要経費の計上」、「小規模企業共済」、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などが挙げられます。
青色申告による65万円控除は、帳簿付けをしっかり行うことで利用でき、節税効果が高い点が特徴です。
また、家事按分により事業用として合理的に経費計上できる範囲が広いことも、個人事業主のメリットです。
マイクロ法人が活用できる主な節税ポイント
マイクロ法人の場合、法人税と所得税の仕組みを活用することで、さらに効果的な節税が可能です。
代表的なものは、「所得分散(役員報酬や配当)」による税額最適化、「法人ならではの範囲広い経費計上」、「退職金積立」、「社会保険料最適化」などが挙げられます。
特に、役員報酬を設定することで個人に対する所得税の負担を抑えつつ、法人側の経費として計上可能です。
また、事業に必要な支出の経費範囲が個人事業主より幅広く認められている点も大きな特徴です。
個人事業主とマイクロ法人による節税方法の比較
節税ポイント | 個人事業主 | マイクロ法人 |
---|---|---|
税率 | 累進課税(最大45%) | 法人税(約15〜23%)+配当・役員報酬に所得税 |
経費計上範囲 | 生活費との区分が必要 | より広範な経費計上が可能 |
社会保険 | 国民健康保険・国民年金に加入 | 原則として社会保険(健康保険・厚生年金)適用 |
退職金 | 制度なし | 退職金制度を導入できる |
損失の繰越 | 3年間 | 9年間(令和4年度以降は10年間) |
申告・管理 | 比較的簡易 | 会計・税務が複雑 |
社会保険と税金の関係
社会保険料の負担と税額の関連性も、個人事業主とマイクロ法人で大きく異なります。
個人事業主は、国民健康保険・国民年金に加入し、所得に応じて保険料が変動します。
一方で、マイクロ法人の場合、法人の代表であっても従業員が1人(自分のみ)の場合でも原則として社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられます。
社会保険料は役員報酬額を基準に算出されるため、報酬の設定によって最適化が可能です。
適切な役員報酬額を設定することで、社会保険料コントロールと所得税・法人税のトータル節税を実現できますが、従業員を雇用する場合や報酬額の調整次第では個人事業主より負担が大きくなるケースもあるため、十分なシミュレーションが必要です。
マイクロ法人による節税の具体的なメリット

所得分散による税負担軽減効果
マイクロ法人を設立することで、事業所得を法人と個人に分散できるため、税負担を軽減できるという大きなメリットがあります。
日本の所得税は累進課税制度が採用されており、所得が多くなるほど税率も高くなりますが、法人としての利益分を給与などの形で分配し、個人の所得税率が高くなりすぎないよう調整することで、個人・法人双方の税負担を最適化できます。
また、配偶者や親族に適正な役員報酬を支給することによる「所得分散」も活用でき、家族経営の中小事業者には有効な節税手段となっています。
社会保険料の最適化
マイクロ法人では役員報酬を低く設定することで、健康保険や厚生年金の社会保険料負担を抑えることが可能です。
法人を活用すると、個人事業主と比較して以下のような違いが得られます。
項目 | 個人事業主 | マイクロ法人 |
---|---|---|
健康保険 | 国民健康保険に加入(所得に比例し高額) | 協会けんぽ等、役員報酬額に応じた社会保険 |
年金制度 | 国民年金のみ(定額) | 厚生年金(将来の受給額増大) |
家族の社会保険 | 各自で国民健康保険・国民年金 | 条件を満たせば家族も法人の社会保険 |
このように社会保険や年金制度の幅が広がるだけでなく、社会保険料の金額を自らコントロールしやすいという強みもあります。
法人化による経費計上範囲の拡大
マイクロ法人を設立することで、個人事業主時代には経費と認められにくかった費用も法人の経費として計上できる場合が増えます。
たとえば、自宅の家賃や光熱費、車両費、出張手当など、業務に関連性が認められる支出を法人の必要経費として計上できれば、課税所得を抑えられるため、法人税・所得税・住民税トータルでの税負担を効率的にコントロールできます。
加えて、法人化により「消費税の免税期間」が最長2年間得られる(2024年6月時点の制度)のも特徴です。
新設法人は一定の要件を満たせば、創業後2年間は消費税免税事業者となり、消費税分のキャッシュフロー改善も期待できます。
退職金制度の活用
マイクロ法人ならではの大きな節税ポイントとして「退職金の活用」が挙げられます。
法人は役員退職金規程を設けることで、自分自身や役員である家族に対し適正額の退職金を支給可能となります。
この退職金は法人の損金(経費)として計上できる一方、個人が受け取る際は「退職所得扱い」となり、優遇された税率(退職所得控除の適用など)が利用できます。
そのため長期的な資産形成や事業承継の場面で、税負担を効果的に軽減しつつ資産を移転できるという仕組みを作ることができます。
マイクロ法人による節税のデメリットや注意点

設立や維持にかかる費用
マイクロ法人を設立・運営するには、さまざまな費用が発生します。
会社設立時には定款認証費用、登録免許税、印紙代などが必要となり、一般的には最低でも20万円前後の初期費用がかかります。
さらに、設立後も毎年法人住民税(均等割)が発生し、利益がゼロでも7万円程度の支払い義務があります。
加えて、税理士や会計ソフトへの委託費用、各種届出・手続きのための事務コストも発生します。
内容 | 目安費用 | 発生頻度 |
---|---|---|
会社設立時の初期費用 | 約20万円 | 設立時のみ |
法人住民税(均等割) | 約7万円/年 | 毎年 |
税理士・会計ソフト費用 | 数万円~/年 | 毎年 |
複雑な会計・税務対応の必要性
マイクロ法人を運営する上で、個人事業主と比較して帳簿付けや決算・申告業務が格段に複雑になります。
法人の決算書作成や法人税、消費税、地方税の申告が義務化され、各種税務書類の作成・提出が必要です。
不備があると罰則が課されるほか、正確な処理が求められるため、税理士の活用を検討する必要があります。
また、経費計上要件も厳格化されるため、税務リスク管理にも注意が必要です。
社会保険加入義務と負担
マイクロ法人を設立すると、原則として社会保険(健康保険・厚生年金)への強制加入義務が生じます。
一人だけの会社(いわゆる一人社長)であっても、法人という形態である以上、役員報酬に対して社会保険料を支払う必要があります。
また、社会保険料負担は原則折半ですが、実質的には本人ひとりで負担することになるため、報酬額によっては個人事業主時代よりも負担が大きくなる場合があります。
これにより、資金繰りやキャッシュフローにも影響が及ぶ可能性があります。
事業形態 | 社会保険加入 | 保険料負担 |
---|---|---|
個人事業主 | 国民健康保険・国民年金 | 全額自己負担 |
マイクロ法人 | 健康保険・厚生年金 | 会社と個人が折半(実質全額負担) |
税務リスクやペナルティの可能性
マイクロ法人を利用した節税対策が「租税回避」とみなされることや、税法改正により想定していた節税効果が得られなくなるリスクも存在します。
特に、事実と異なる形式的な節税は、税務署から指摘や調査を受け、追徴課税や延滞税、加算税等のリスクがあります。
また、税制や社会保険制度は毎年見直しが行われており、現行の制度に適合していても将来的に不利な改正が行われることも考えられます。
適切な情報収集とプロによるアドバイスが不可欠です。
マイクロ法人の節税が向いている人・向いていない人の特徴

向いているケースの具体例
マイクロ法人による節税が特に効果的でメリットの大きい人の特徴は次のとおりです。
特徴 | 理由・具体例 |
---|---|
年間所得が900万円以上ある個人事業主・フリーランス | 個人事業主の所得税率は累進課税のため、高所得層になるほど税負担が増加します。法人化することで所得分散や役員報酬の活用により節税効果を実感しやすくなります。 |
副業が認められているサラリーマン (本業+マイクロ法人の二重構造) | 給与所得のほか、事業所得をマイクロ法人で受けることで社会保険料や税額の最適化ができます。副業の規模が大きくなった場合、法人化のメリットが特に出やすいです。 |
家族への所得分散を検討している個人 | 家族を役員や従業員とし給与を分配することで所得分散ができ、世帯全体での節税効果が期待できます。 |
経費計上可能な支出が多い事業者 | マイクロ法人にすることで経費計上範囲が拡大し、実態に即した適切な経費処理が可能です。結果として利益を圧縮することができます。 |
将来的な退職金積立や福利厚生を重視する人 | 法人化することで退職金制度や生命保険活用など、法人独自の節税策を活用できるため、中長期的に資産形成を考えている方にも適しています。 |
向いていないケースの具体例
一方で費用や手間、リスクを考えると、マイクロ法人による節税が必ずしもおすすめできない人も存在します。
主な該当例は以下の通りです。
特徴 | 理由・具体例 |
---|---|
年間所得が300万円未満の小規模事業者 | 年間所得が低い場合、法人設立や維持にかかる固定費(法人住民税・会計/税務報酬等)のほうが節税効果を上回るリスクがあります。 |
会計・税務処理が苦手な方 | マイクロ法人は決算・税務申告等、手続きが煩雑なため、専門知識や継続的な事務処理が困難な方には負担が大きくなります。 |
社会保険料を極力支払いたくない人 | マイクロ法人は社会保険への強制加入義務があり、役員報酬の額次第で保険料負担が増すケースもあります。開業動機が「社会保険料削減のみ」の場合は注意が必要です。 |
事業の継続性が不透明な方 | 収益が変動しやすく、事業の継続性に不安がある場合、法人設立の初期費用や維持費が重荷となる場合があります。 |
副業が禁止されている会社員 | 副業禁止規定に違反すると、本業に支障が出るリスクがあるため、慎重な判断が必要です。 |
判断時のポイント
マイクロ法人設立の可否は、単なる節税効果だけではなく、今後の事業成長見込みやライフプラン、社会的信用、また労力・コスト面の総合的なバランスを見て判断することが非常に重要です。
また、将来の法律改正や社会保険制度の見直しによる影響も念頭に置き、税理士等の専門家に必ず相談したうえで自分に合った選択を行いましょう。
マイクロ法人による節税の流れと設立手順

設立前の準備事項
マイクロ法人の設立を成功させるためには、事前の準備が非常に重要です。
まず、自分のビジネスモデルや収入形態がマイクロ法人設立に適しているか、会計士や税理士に相談することをおすすめします。
設立目的や規模、想定される年商、節税による効果をシミュレーションし、具体的なプランを明確にしましょう。
また、個人事業と法人の役割分担や、社会保険の加入義務など、クリアすべき法的・税務面の課題の洗い出しも必要です。
準備段階で整理すべき主なポイント
ポイント | 概要 | 注意点 |
---|---|---|
事業内容の確認 | マイクロ法人で行う業務・取引の範囲を決める | 本業との利益相反や重複がないか |
決算期の設定 | 収入の時期に合わせて決算期を選定 | 税務メリットが生じるタイミングを考慮 |
役員構成 | 代表者と役員の人選・役職・報酬を検討 | 家族の登用や報酬分散の可能性 |
会社設立の手続き
実際の設立手続きは行政書士や司法書士に依頼することも可能ですが、主要なステップは次のとおりです。
最初に会社名(商号)、本店所在地、事業目的、資本金、役員構成を決定します。
そのうえで、定款を作成し、公証人役場で認証を受けます。
設立登記書類を法務局に提出し、設立登記が完了するとマイクロ法人が正式に成立します。
主な設立手続きの流れ
ステップ | 内容 |
---|---|
1. 定款の作成 | 会社の基本事項を定め、電子または紙で作成。原則として電子定款が印紙税節約に有利。 |
2. 定款認証 | 公証役場で定款の認証手続きを行う。 |
3. 資本金の払込み | 代表者の個人口座へ資本金を振込み、資金の準備を証明。 |
4. 設立登記申請 | 必要書類を揃え、法務局へ提出。登記完了で法人格を取得。 |
さらに、法人設立後・開業前には税務署、市区町村、年金事務所などに届出を行う必要があります。
法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など、提出書類を漏れなく準備しましょう。
開業後に気をつけるべきポイント
設立完了後は、日常的な運営と法定義務の履行が求められます。
まず、会計帳簿の記帳と管理は厳格に行い、経費計上や領収書の保管を徹底することが大切です。
また、社会保険や労働保険への適正な加入が必須となるため、人件費や保険料コストも計画的に管理しましょう。
毎月の役員報酬の支払いは安易に変更せず、事前に決定した金額を守ることが節税効果を最大化します。
決算や税務申告は専門家へ依頼するのが一般的ですが、法人の場合、赤字でも毎年「法人住民税の均等割(7万円~)」の納付が必要です。
また、年度ごとに法定調書や源泉徴収票の提出義務も発生します。
不明点は税理士や社労士と相談しながら、コンプライアンスを守った運用を心掛けましょう。
実際の成功事例と失敗事例

成功事例の紹介
マイクロ法人による節税が大きな効果を上げた代表的な事例として、ITコンサルタントのAさん(東京都・40代・個人事業主から法人成り)のケースがあります。
従来は個人事業主として一人で年間900万円の所得を得ていたため、所得税・住民税だけで約240万円を負担していました。
しかし、マイクロ法人を設立し、収益の一部を法人所得として受け取り、役員報酬を月8万円に設定。
これにより個人にかかる所得税の負担が軽減されるとともに、法人としても均等割のみの課税で済み、社会保険料も最小限に抑えられました。
また、法人名義で情報機器や交通費、研修費など幅広い経費計上ができるようになり、実質的な手取り額が年収ベースで約40万円増加しました。
さらに、退職金制度を準備し、中長期的な資産形成も見込める体制まで整えることに成功しています。
このケースでは、税理士と連携して正確な会計処理と法改正への迅速な対応により、リスクを最小限に抑えることができています。
成功ポイント | 具体的取組 | 得られた効果 |
---|---|---|
所得分散 | 役員報酬の最適設定 | 所得税・住民税の軽減 |
社会保険料の調整 | 最低報酬額で社会保険加入 | 社会保険料の負担減 |
経費計上の拡大 | 法人契約で幅広く費用化 | 課税所得の圧縮、資産形成 |
専門家連携 | 税理士による定期的な監査 | 税務リスクの回避 |
失敗事例とその教訓
一方で、マイクロ法人による節税が思うようにいかなかった失敗事例も存在します。
デザイナーのBさん(大阪府・30代)の事例では、個人所得を抑えることを優先し、法人設立後に役員報酬を月5万円と低額に設定。
しかし、法人として受注できる仕事が安定せず、売上の減少に伴い法人の維持費(法人住民税均等割、会計士報酬、社会保険料)だけが大きな負担となりました。
さらに、accounting softwareを使いこなせず会計や社会保険の手続きの煩雑さに対応できず、経費計上ミスにより税務調査を受けることとなり、追加の税金とペナルティが発生しました。
また、一部業務を個人名義で受託したことから二重の帳簿管理が求められ、事務負担も増え、本業に集中できなくなるという悪循環に陥っています。
主な失敗要因 | 具体的問題 | 生じたリスク・損失 |
---|---|---|
売上不足 | 法人売上計画が未達成 | 維持費が収益を圧迫 |
会計知識不足 | 帳簿付け・経費処理ミス | 追加納税・罰則の発生 |
複雑な手続き | 社会保険・税務申告ミス | 事務負担、精神的コスト |
計画性の欠如 | 業務委託の名義混在 | 手取り現象、本業停滞 |
これら事例から得られる教訓は、「事前の事業計画と資金計画が重要であり、専門家と連携して正確な会計処理・税務申告を行うことが、マイクロ法人による節税を“成功”に導くカギとなる」という点です。
また、法人化による社会保険や税務の新たな義務、行政手続きの煩雑さといった負担も重視し、自身の規模や状況に適した制度利用の判断が不可欠です。
最新の法改正・税制改正がマイクロ法人の節税に与える影響

直近の法人税・社会保険制度の改正
2023年以降、マイクロ法人に影響を与える税制や社会保険制度の改正が相次いでいます。
特に、2024年度税制改正大綱や社会保険制度の見直しは、小規模法人にも無視できない影響を与えています。
改正項目 | 内容 | マイクロ法人への主な影響 |
---|---|---|
法人税率・所得拡大促進税制 | 2024年度改正で 所得拡大促進税制の適用要件が厳格化 | 人件費を増加させにくいマイクロ法人では、 適用ハードルが上昇し節税効果が限定的に |
外形標準課税の見直し | 資本金1億円以下の法人も一部対象範囲が拡大 | 東京都など一部地域で、課税対象となる例が増加 |
社会保険適用範囲拡大 | 2024年10月より 従業員数51人以上から「51人未満」事業所へ社会保険適用拡大 | パートやアルバイト活用のマイクロ法人も社会保険加入義務が生じやすくなった |
退職所得課税の見直し | 退職金の課税制度が議論の対象となり、今後見直し可能性あり | 退職金による節税効果が低減するリスクがある |
2024年社会保険適用範囲拡大の改正は特に注意が必要です。
これまでは従業員数が50人以下の法人は社会保険の適用除外となるケースも多かったですが、この改正により、マイクロ法人でもパート従業員を雇う場合に社会保険加入が必須となるケースが増えています。
結果として、社会保険料の負担増加とそれに伴うキャッシュフローへの影響が懸念されます。
また、法人税制については、中小企業向けの特例措置が見直される動きもみられます。
今後さらに所得拡大税制や外形標準課税の影響が小規模事業者にも波及する可能性があり、マイクロ法人による「低コストでの節税モデル」の持続性が問われています。
今後の税制動向と注意点
政府は、マイクロ法人を活用した過度な節税や社会保険料逃れへの監視強化を続けています。
近年、役員報酬を最低限に抑えたうえで法人を維持し、社会保険料や所得税の負担を最小化するスキームに対し、国税庁や厚生労働省は税務調査を強化しています。
特に以下の点に注意が必要です。
- 役員報酬設定の妥当性や、実質業務実態に即した社会保険の適用判断
- 節税目的のみの法人設立、形式的な法人スキームへの否認リスク
- 将来的な法人向け優遇税制の廃止や制限
専門家の分析では、2025年以降もマイクロ法人をターゲットとした税制・社会保険制度の改正が続く可能性は高いと予想されています。
現時点で制度適用が可能であっても、毎年の法改正・税制改正の動向を必ず確認し、顧問税理士や社会保険労務士への相談を欠かさないことが重要です。
まとめ
マイクロ法人を活用した節税には、所得分散や社会保険料の最適化、経費計上範囲の拡大など多くのメリットがあります。
しかし、設立・維持コストや税務リスク、適切な運用を怠った場合のペナルティも存在します。
制度改正動向を常に確認し、自身の状況に最適な判断を行うことが重要です。