マイクロ法人の決算は税理士に依頼すべきか、それとも自分で行うべきか迷っていませんか?
この記事では、それぞれのメリット・デメリットや費用、会計ソフトの選び方、失敗例と対策まで詳しく解説。
自身の知識や会社の状況に応じて最適な決算方法を判断できるようになります。
マイクロ法人とは何かと決算業務の概要
マイクロ法人の定義
マイクロ法人とは、社員数が1人から数人程度の小規模な株式会社や合同会社を指します。
多くの場合、経営者本人が代表取締役や役員を兼ね、従業員を雇わずに運営されるケースが主流です。
一般的に、フリーランスや個人事業主が節税や信用力向上、社会保険対策などの目的で設立する場合が多いのが特徴です。
資本金や売上規模は小規模でも、法人としての法的義務や役割は大企業と同じである点をご留意ください。
マイクロ法人の決算とは
決算とは、一定期間の経営活動を締めくくり、会社の損益や資産状況など財務状況を明らかにするための手続きです。
マイクロ法人であっても、毎事業年度ごとに決算書類を作成し、法人税・消費税・地方税などの申告と納税を行う必要があります。
決算作業は、企業規模にかかわらずすべての株式会社・合同会社などの法人に法律で義務付けられています。
マイクロ法人決算に必要な書類と手続き
マイクロ法人の決算では、次のような書類作成や提出が必要です。
手続きの概要を下表にまとめます。
書類名 | 提出先 | 提出期限 | 主な内容 |
---|---|---|---|
貸借対照表・損益計算書等(決算書類) | 株主・法人内 | 決算日から2ヶ月以内に作成 | 会社の財務状況・経営成績を示す |
法人税申告書 | 税務署 | 決算日から2ヶ月以内 | 法人税額の確定申告 |
消費税申告書(該当する場合) | 税務署 | 決算日から2ヶ月以内 | 消費税の確定申告 |
地方税申告書 | 都道府県・市区町村 | 決算日から2ヶ月以内 | 法人住民税・法人事業税等の確定申告 |
事業報告書等 | 法務局 | 株主総会から2週間以内(株式会社のみ) | 会社の事業内容や状況を報告 |
マイクロ法人といえども、決算書類の作成・税務申告・納税・登記など、一般の法人とほぼ同様の対応が求められるため、毎年の決算業務は重要です。
書類不備や期限遅延には注意しましょう。
マイクロ法人決算を税理士に依頼する場合

税理士に依頼するメリット
専門知識を活用した正確な申告
税理士に依頼する大きなメリットは、高度な会計・税務知識に基づく正確な決算申告が実現できる点です。
マイクロ法人でも法人税や消費税、地方税等の各種税金の申告が必要ですが、専門用語や計算方法が複雑で、ミスが発生すれば税務署から指摘されるリスクもあります。
税理士は常に最新の税制改正に対応しており、独自で作業する場合よりも正確かつ安心です。
節税対策や相談ができる
節税のためのアドバイスや経営全体のアドバイスを受けられることも、税理士に依頼する大きな魅力です。
経費計上の適切なポイントや、決算前に行うべき節税策、役員報酬の最適化など、専門知識がないと気づきにくい部分についてもアドバイスを受けられます。
税務調査対応の安心感
税理士が付いていることで、税務調査時も安心して対応できます。
税務署から調査が入った場合でも、過去の帳簿や資料整理、税務署とのやりとりを税理士が代理で行えるため、精神的な負担や手間を軽減できます。
税理士に依頼するデメリット
顧問料・決算費用などのコスト
税理士に依頼する最大のデメリットはコストがかかることです。
年間顧問料や決算ごとの申告書作成費用などが発生し、特に売上規模が小さいマイクロ法人の場合、費用負担が経営を圧迫する場合も少なくありません。
項目 | 相場(目安) | 内容 |
---|---|---|
月額顧問料 | 1万円~2万円 | 日常的な会計・税務相談や記帳代行 |
決算申告料 | 7万円~12万円 | 決算書・法人税申告書類作成、提出 |
税理士選びの難しさとコミュニケーションの手間
適切な税理士を見つけることや信頼関係を築くことにも苦労する場合があります。
業種や法人規模に合った税理士と巡り合うためには複数の候補と面談する必要があり、また、会計データのやり取りや打ち合わせなど、一定のコミュニケーションコストも発生します。
マイクロ法人決算を自分でやる場合

自分でやるメリット
コスト削減ができる
マイクロ法人の決算を自分で行う最大のメリットは、税理士報酬や外部への委託費用が不要なためコストを抑えられることです。
税理士に依頼する場合、年間の顧問料や決算申告料が数万円から十万円以上かかるケースもありますが、自分で対応すれば必要なのは会計ソフト利用料や郵送費、印紙代など必要最小限の実費のみとなります。
特に売上規模が小さいマイクロ法人の場合、決算にかかる固定費を最小限にできるのは経営上大きなメリットです。
会社のお金・数字がわかるようになる
自分で帳簿付けや決算書作成を行うことで、会社のお金の動きや財務状況がより深く理解できるようになります。
日々の取引を会計ソフトに入力し、決算書や青色申告書類を自身で作成する過程で、「売掛金」や「未払金」、「減価償却」などの会計項目も実感を伴って把握できます。
これにより経営判断がしやすくなるだけでなく、不正防止や経費削減にもつなげることができる点が大きな魅力です。
自分でやるデメリット
会計・税務知識や申告書作成の難易度
マイクロ法人でも法人決算や法人税申告には一定の会計・税務知識が求められるため、初めての場合は戸惑うことも多いです。
会社法や税法の基礎、仕訳のルール、減価償却や繰延資産の処理、必要書類の作成など、個人事業主時代と比べても手続きが複雑でミスが発生すると修正が難しい場合もあります。
国税庁のホームページや商工会議所の情報を活用して勉強する必要があります。
時間や手間の負担
決算期の締め処理や法人税・消費税・住民税・事業税の申告書作成、財務諸表の作成は非常に手間と時間がかかることもデメリットのひとつです。
様式の確認や書類の準備、法定調書の作成、提出期限の管理、e-TaxやeLTAXによる電子申告作業などをすべて自分でこなす必要があります。
本業が忙しい場合、大きな負担となりやすく、会社全体のパフォーマンス低下に繋がることもあります。
税務リスクとミスの可能性
税務や会計処理の知識不足から、記載ミスや提出書類の不備、損金・益金処理の誤り、申告漏れなどのリスクが高まります。
例えば減価償却費の計算間違いや、交際費処理の誤り、消費税区分の相違などはよくあるミスの一例です。
これらを放置してしまうと、税務調査で指摘を受けたり、追徴課税や加算税が課される可能性もあります。
特に初めて決算を行う場合は、最新の税制改正や提出方法を事前にしっかり確認することが重要です。
自分で決算をやるメリット | 自分で決算をやるデメリット |
---|---|
税理士報酬が不要で大幅なコスト削減が可能 | 法人税申告や決算処理など専門知識の習得が必要 |
会社の経理状況を詳細に理解できる | 作業に多くの時間や労力がかかる |
節約意識や経営感覚が身につく | 書類不備や計算ミス、税務リスクが発生しやすい |
税理士依頼と自分でやる場合の費用比較

税理士報酬の相場
マイクロ法人の決算業務を税理士に依頼する場合、気になるのがその費用です。
税理士費用は事務所や地域、依頼内容によりますが、一般的な相場は下記のとおりです。
項目 | 費用相場(年間) | 内容 |
---|---|---|
顧問料(月額) | 10,000~30,000円 | 月々の記帳サポート・税務相談など |
決算申告報酬 | 70,000~150,000円 | 決算書作成・法人税申告書の作成と提出 |
その他(年末調整等) | 5,000~30,000円 | 年末調整・法定調書作成など |
マイクロ法人の場合、年間コストはトータルで15万円~30万円ほどが目安となります。
ただし決算のみ単発で依頼できる事務所もあり、顧問契約をしないケースなら費用を抑えることも可能です。
安さだけでなく、専門性やサポート体制にも注目しましょう。
会計ソフトや青色申告など自分でやる場合の費用
自分で決算を行う場合の主な費用は、会計ソフト利用料や書籍購入などですが、税理士報酬と比べると大幅にコストダウンが可能です。
項目 | 年間費用 | 備考 |
---|---|---|
会計ソフト利用料 | 10,000~30,000円 | クラウド型やパッケージ型で金額差あり(例:弥生会計・freee・マネーフォワード) |
電子申告利用料 | 0~5,000円 | e-Taxは無料、専用ソフト利用時は費用がかかる場合も |
参考書・解説本 | 2,000~5,000円 | 会計・申告方法を学ぶ場合に必要 |
自分で決算を行う費用は、主に会計ソフト分だけで済むため、年間1~3万円程度に抑えられることが多いです。
ただし、すべて自分で正確に作業する必要があるため、ミスや申告漏れによるペナルティリスクも考慮しましょう。
費用面では「自分でやる」方が有利ですが、「安心感」や「節税サポート」などを重視するなら税理士に依頼するメリットも大きいです。
自社の実情や、どこまでのサポートや相談が必要かをよく検討しましょう。
マイクロ法人決算作業に使える主な会計ソフト

マイクロ法人の決算を自分で行う場合や、税理士とのやり取りをスムーズに進めるためには、会計ソフトの活用が非常に重要です。
現在ではクラウド型も含めて複数の会計ソフトが提供されており、どのサービスも小規模法人や個人事業主向けの使い勝手や決算書類の自動作成機能を備えています。
それぞれのソフトの特長や機能を踏まえ、ご自身の業務スタイルやニーズに合ったものを選びましょう。
会計ソフト名 | 主な特徴 | マイクロ法人に向いているポイント |
---|---|---|
弥生会計 | 長年の実績を持ち、使いやすさとサポート体制が高評価。クラウド版とインストール型の両方が選べる。法人決算書や各種申告書の自動作成に対応し、経費管理や領収書整理の機能も充実しています。 | 初めての法人経理でも操作が直感的でわかりやすく、弥生カスタマーセンターによる無料サポートもあり。デスクトップ型志向の法人にも強くおすすめできます。 |
freee | クラウド型で、スマホ・PCどちらからでも利用可能。銀行やクレジットカードと自動連携し、日々の取引を自動仕訳できる。決算書や法人税申告書の作成支援も用意されています。 | 会計知識が浅い担当者でも「質問に答えるだけ」で処理が進む独自UIを装備。業務フローがシンプルなマイクロ法人、または外出先でも決算作業を進めたい法人には特に便利です。 |
マネーフォワードクラウド会計 | クラウド会計ソフトの先駆者で、金融機関連携や請求書管理、経費精算など多機能。役員報酬計算や社会保険手続きなども一部連動可能です。 | 小規模法人から中堅企業までスムーズに対応でき、税理士とのデータ共有もワンクリックで可能。決算作業だけでなく月次管理の効率化を重視する法人に適しています。 |
弥生会計
弥生会計は、日本国内で最も利用者が多い会計ソフトのひとつです。
インストール型とクラウド型のどちらも選択でき、法人用としての決算書類の自動作成、青色申告への対応、消費税・法人税申告用書類の作成機能が強みです。
また電話・チャット・メールによる手厚いサポートも受けられるため、会計や決算作業をこれから学びたいオーナーにも安心です。
料金は利用プランやサポート内容により異なりますが、初年度は無料で試せるキャンペーンもあり、導入のハードルは低いと言えます。「専門的な作業をなるべく自力でやりたいが、困ったときにはプロに相談したい」というマイクロ法人に特に適しています。
freee
freeeは、完全クラウド型で、スマートフォンからも全機能が操作可能な点が特徴です。
銀行・クレジットカードの明細自動取込、AI仕訳などにより、入力の手間やミスを大幅に削減できます。
設立間もないマイクロ法人に向けてはガイド機能やテンプレートが充実しており、会計知識に自信がなくても決算と申告に必要な作業を流れで進められます。
また、クラウド上で税理士とデータ共有できるため、遠隔地に担当税理士がいる場合や、複数人での会計管理にも強みを発揮します。
費用は月額制が基本で、法人プランは主に数千円台から用意されています。
マネーフォワードクラウド会計
マネーフォワードクラウド会計は、自動化と連携性に長けたクラウド会計ソフトです。
銀行やクレジットカードだけでなく、給与計算や請求管理、社会保険などのクラウドシステムとも連動可能です。
決算書類や電子申告用データ出力も簡単にでき、各種税務書類の作成もスムーズです。
さまざまな管理業務を一つのプラットフォームで完結したいマイクロ法人には特におすすめです。
税理士や経理担当者とのリアルタイムな情報共有、拡張性のあるサポートなど、将来的な法人拡大も見据えた運用が可能な点が特長となっています。
いずれの会計ソフトも、マイクロ法人の実情やニーズに応じてコストパフォーマンスやサポート体制、導入のしやすさなどを比較検討することが大切です。
事業規模や経理担当者の経験、現在利用している他のツールとの連携性なども考慮のうえ、最適な会計ソフトを選んでください。
マイクロ法人決算でよくある失敗とその対策

必要書類の紛失や記載漏れ
マイクロ法人の決算では、多くの証憑書類や会計帳簿の保存が求められます。
特に領収書や請求書、通帳コピー、契約書などが提出・保存対象となるため、書類の整理不足や記載項目の抜けによるトラブルが少なくありません。
よくある失敗例 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
領収書・請求書の紛失 | 日々の管理を怠っている | 日常からファイリング、月ごと・種類ごとで分けて保管。スキャンしてクラウド保存も有効。 |
帳簿の記載漏れ | 現金取引や少額経費の記録忘れ | 取引ごとに即時記帳、会計ソフトの自動連携機能を活用。 |
決算書記載内容の抜け | 必要事項・数字の見落とし | 総勘定元帳・試算表の照合、決算チェックリストを活用。 |
消費税・法人税・地方税の申告ミス
税額計算や申告書類の作成ミスはマイクロ法人でも起こりやすく、修正申告・延滞税が発生する原因になります。
消費税の納税義務の有無や、法人住民税・事業税の計算方法など、細かい規定を見落とすことが多いです。
主なミス | 内容 | 対策 |
---|---|---|
消費税課税・免税の判断ミス | 基準期間売上が1,000万円超かどうかの誤判断 | 基準年度の売上高と「消費税課税判定表」で確認。 |
法人税の損金算入漏れ | 経費にできる支出(役員報酬、福利厚生費など)の見落とし | 税務署公表の「法人税の手引き」で経費区分を都度確認。 |
地方税申告書の記載ミス | 均等割・法人事業税などの算定ミス | 自治体の様式・記載例をもとに慎重に作成。二重チェックを徹底。 |
決算期日に間に合わないリスク
決算作業を後回しにした結果、申告期限直前に焦って作業しミスが発生、延滞税や加算税のリスクが高まるケースが多発します。
特に初年度や従業員ゼロ~数名規模のマイクロ法人は経理専任者がいないため、計画性が重要です。
起こりやすい事例 | 理由 | 対策 |
---|---|---|
準備不足で申告期限オーバー | 決算日から2か月という期限を認識していない | 年度初めにスケジュール設定。カレンダー等で申告期限を可視化。 |
残高・帳簿の未整理で間に合わない | 日頃の記帳や資料整理を怠ったため一斉に処理が必要になった | 月次での処理・残高合わせ、会計ソフトの活用を習慣化。 |
ソフトの無料プラン期限切れ | 無料会計ソフトやExcel利用で途中から出力制限がかかった | 必要な機能のサービスプランを早めに確認。 |
マイクロ法人決算は税理士と自分どちらが向いているか判断基準

業務内容・収益規模・知識レベルからみた判断ポイント
マイクロ法人の決算を税理士に依頼すべきか、自分で行うべきかは、自社の業務内容・事業規模・担当者の会計や税務の知識レベルによって適した選択が異なります。
たとえば、取引のシンプルな法人や売上が少ない法人の場合、会計ソフトを活用して自分で決算書類や確定申告書を作成することも現実的です。
逆に、複数の事業や従業員を持ち、取引件数が多くなる法人や、税務知識に自信のない担当者の場合はミスや申告漏れのリスクも高いため、専門家に依頼する方が適切といえるでしょう。
判断基準 | 税理士向き | 自分で向き |
---|---|---|
年間売上 | 500万円以上 | 500万円未満 |
取引複雑度 | 多業種・部門や複雑な仕訳が多い | 単一事業・取引件数が少ない |
会計・税務知識 | 初心者・知識不足 | 基礎知識や簿記経験あり |
費用負担 | コストより正確性重視 | できる限りコスト削減したい |
時間的余裕 | 日々忙しく作業時間不足 | スケジュールに余裕あり |
こんな場合は税理士に依頼した方がよいケース
以下の状況に当てはまる場合は、税理士への依頼が強く推奨されます。
法人税や消費税の申告内容に不安がある、帳簿管理や決算書作成が初めてといった場合は専門家のサポートを活用することでリスクを最小限にできます。
- 会社設立初年度、会計・税務業務が初めての場合
- 複数年分の決算や過去分の申告漏れがある場合
- 役員報酬や役員貸付金、交際費の処理などで判断に悩むケースが多い場合
- 節税や税務調査対策を意識している場合
- 申告期限直前など、作業時間に余裕がない場合
特に、節税や税務リスクを重視したい方・税務署からのお尋ねや調査対応が不安な方は税理士への依頼による安心感が大きなメリットとなります。
また、税制改正への対応や最新情報のキャッチアップも税理士に委任することで負担が軽減されます。
こんな場合は自分でやることが可能なケース
一方で、年間の売上や取引が非常に少なく、法人運営をシンプルにしているケースでは、自分で決算書類や法人税申告書を作成することも十分に現実的です。
会計ソフトの操作に不安がない、ある程度の簿記知識がある場合は費用を抑えるためにもセルフでの決算がおすすめできます。
- 1人会社など、少人数で経費・売上の管理が簡単な場合
- 毎月の収支や領収書管理ができており、年次書類がすぐ作成できる場合
- 会計ソフトや電子申告に慣れている場合
- コスト削減を最優先したい場合
- 過去に決算・申告を自分で行った経験があり、特に問題が発生しなかった場合
セルフ決算は、時間的リソースや一定レベルの会計・税務知識がある方にとって大きな経費削減効果があります。
ただし、法改正や申告書様式の変更など最新情報を随時チェックする姿勢は必要です。
まとめ
マイクロ法人の決算は、税理士に依頼すれば専門知識と安心を得られますが、費用がかかります。
一方、自分で行えばコスト削減が可能ですが、知識や手間、リスクも伴います。
法人規模や会計経験を考慮し、弥生会計やfreeeなど適切な会計ソフトも活用して、最適な方法を選びましょう。